本棚で増殖を続けるピンクの背表紙のアイツ
手軽に古典に触れられて、解説やコラムも面白い、古典初心者の味方「ビギナーズ・クラシックス」シリーズ(角川文庫)。
私は典型的な「数学も英語もできないから国文」だった文系なのですが、そのくせ古典は苦手というどうしようもない学生でした。古典の文法が全くわからねえ。むしろ漢文の方がまだわかる。源氏物語が子守唄でしかない。「この金持ちの鼻持ちならない男がどんな女と付き合おうが別れようが知ったことかよ」と嘆きつつ、テスト前には一夜漬けに勤しんだものです。
今では源氏物語も(一応)読みましたし、古典文学も好きではあるのですが、だからって古典をそのまま読めるかというとそういうわけではないので。
「こう……手軽に読めて面白くて、古典がわからなくても時代背景とかちょっと理解できた気になれちゃうものはないかな〜」と図々しさ全開であれこれ探した挙げ句、この角川のビギナーズ・クラシックスに辿り着き、辿り着いた後は増え続けているわけです。
ビギナーズ・クラシックスの「古事記」はどうか?
ビギナーズクラシックの「古事記」は全文を取り上げるわけではなく、面白そうなところをピックアップして紹介・解説する方式。
まず「古事記」がどのように成立したのかを説明し、日本の国の成り立ちに関する神話部分が取り上げられ、スサノオが登場し、天照大神が岩屋に隠れてそれを引っ張り出すための計画があり……と続いていくわけですが。
流石に古事記をこのボリュームでちゃんと取り上げるのには無理があったとみえて、ピックアップされる場面がわりとブツブツ切れて前後関係がわかりにくい部分もあり。
特にラストは息切れかページ不足か、兄弟王子の話がいきなり始まりいきなり終わり、「え? これ誰? というかここで終わり? え?」と思わず目次を見直しました。
古事記の編纂にあたり、当時は中国からの輸入文字である漢字しかなかった(ひらがなとカタカナがなかった)ために、どう記述するべきかという苦悩があったとか、文中に出てくる道具類の図解であったりとか、解説部分は相変わらずおもしろいものが多いのだけど、やはりボリュームが足りていなさすぎる。
おそらく「大鏡」と同じ人が解説を担当なさっていると思うのだが、本文部分が足りていないのに解説が挟まれるため、今回は余分に感じる部分もしばしば。解説者の個人的な感想部分が邪魔にすら感じる。
ビギナーズ・クラシックスはけっこうこの解説部分が合う・合わないがあって、このへんは好みによっても違うでしょうから、Amazonなんかのレビューなどで探りつつ、直感に任せて挑んでみるしかないんですよね。
相変わらず地図や解説絵の入れ方が親切で、そのへんはやはり安心感があるんですが。
「なんかいきなり分厚くて字も小さい本家にチャレンジするのは無理だから、古事記の概要だけ知りたい」という場合でも、もう少し全体像がわかりやすい入門書があるのではないかなあという気がします。
現代語訳部分がくだけていてわかりやすし、解説も面白い部分はあるんですけどね。
コメントを残す