アール・ヌーヴォー風の絵柄で描かれた美しいタロット。
かなり前に購入したタロットなので、デューラーのタロットのように絶版になっているのでは?と心配していたのだが、こちらはまだ現役の様子。Amazonでも購入ページがありました。
Amazonでのご購入はこちら。
しかし私が持っているものとは版が違うようで、パッと見たところ表の絵柄は同じのように感じるものの、裏面のデザインが大きく変化。
私が持っているものも今のバージョンも、カード裏面は正逆が分かるタイプ。特に現行バージョンのものは見てすぐ正逆が分かるので、実際に占いに使うつもりで購入する方はご注意を。
メーカーはイタリアのLo Scarabeo、サイズも同社のいつものサイズ(つまり標準的なタロットのサイズ)。
箱はキャラメルボックス式です。
アール・ヌーヴォー風のタロットは他にも幾つか種類があって、似たようなタイトルになっているものもありますので、選ぶ際には自分が欲しいものか、絵柄の雰囲気は希望のものか、よく確かめてください。できれば画像付きのサイトで購入するほうが間違いがありません(タロットは普通、画像を紹介している販売サイトが多いが)。
とても人気のあるタロットですが、そのせいかどうも粗悪品が出回っている様子。
値段が安すぎるもの、オークションサイトなどで出ているものはちょっと注意してください。
この商品に限ったことではないのですが、最近どうも幾つかのタロットで偽物が出ているようで、新品なのにあり得ない値段だったり、他から画像をコピーしてきたと思われる販売ページを見かけたりします。
値段が大きく違う販売ページが多い(ただしミニ版の時もある)、レビューに不自然なほど「中古品のような状態できた」「印刷がおかしい」などの評価がある、そういうタロットは購入前に検索して偽物の報告がないか、確認してみた方が良いかもしれません。
どうしても欲しいけど不安、という場合は、何百円か高くても信用のおける店で購入するという方法もあります。
アール・ヌーヴォータロットの特徴
まずは大アルカナから幾つか。
とても繊細で美しいイラスト。
見ているだけで楽しいタロットです。
カードの並びはマルセイユ版と同じで、8が正義、11が力。
「力」が押さえているのがライオンではなく、たぶんケンタウロスになっている上、他カードの衣装(戦車に載っている若者とか)の鎧の雰囲気などからしてギリシア神話がベースなのかな?と思いきや、愚者や悪魔は別にそういう絵でもなく。悪魔はアメコミにヴィランとして出てきそうな雰囲気もある。
次に小アルカナ。
小アルカナの数札も、シンボルだけではなく絵があるタイプ。
なんですが、ライダー版に近い雰囲気だったりモチーフを取り入れたりしているものもあるものの、全体として独自色が強い絵と構図。
ワンドの4とペンタクルの4が共に女性二人、なんとなく「お姉様……」みたいな空気なので「え? 元の絵柄ってどうだったっけ?」とライダー版を確認しましたが、全然そういう絵ではない。
ワンドの4の方は登場人物二人という部分は合っているが、ライダー版の四本の棒が立つ向こうに花束を振る二人、という構図からはだいぶ遠い。雰囲気も別に似てはいない。
ペンタクルに至ってはライダー版はコインを独り占めしてニンマリ笑っている男性。掠ってもいない。
じゃあライダー版は全く関係ないかというとそうでもなく、ソードは雰囲気を寄せている絵もそこそこ見られ、カップの6は子供二人の構図が同じ。カップの6はライダー版を見慣れている人なら、元の絵を連想できると思います。
もともとマルセイユ版には小アルカナの数札に絵がついていない(シンボルのみ)なので、マルセイユ版をベースにしつつ小アルカナに絵をつけたデッキはこういうことはよくあるんですが、ここまで「なんでその絵にした?」と謎の構図を持ってきているのも珍しい気はします。以前紹介したデューラーのタロットもマルセイユベースで小アルカナに絵をつけたタイプですが、これよりはライダー版の小アルカナの構図を踏まえている。
ワンドとペンタクルが女性二人で似た構図なので、ソードやカップも同じなのかと思って確かめてみたところ、そんなことはなく。なぜワンドとペンタクルはここまで似た雰囲気の絵にしたのか謎だ……。
コートカードはキングに男性だけではなく、一緒に女性も描かれているのが特徴。
男性の傍らに女性が寄り添っている、という構図が多いのですが、ペンタクルのコンビだけは女性がかなり逃げ腰。というより、抱え込もうとしている男性を拒否して必死に逃れようとしているように見える絵。
何かモチーフがあるのか? ギリシア神話風なら、ゼウスが連れてきちゃった誰か? クイーンはどうなっていたっけ? と思って見てみたら、
キングの二人がこれで、
クイーンがこう。
明らかに違う女じゃねーか。
そらお嬢さんも逃げようとするはずだわ!
「え、ちょっと困ります」ってやつだよ! 不倫とか私困るんで……妻帯者とか聞いてないし……みたいなこと!? もしかして本当にゼウスか!? 奥さんだって相当強引にモノにしたくせに、他の女に手を出しまくってそのたびに洒落にならないトラブルに発展しているお前か!?
他のスートのカップルはこんなことになってないはず……
あれ? 全部キングの連れている女とクイーンが違うな?
いや……どうなんだろう。ワンドの女性は髪型が違うだけで同じと見えなくもないような?
カップは顔も髪型も別人に見えるな……どうなんだろう。ペンタクルほどはっきり別人ではないが……。
まあ、別に同じ人物を取り上げているわけではないのかもしれない。
このクイーンたちの夫とキングに描かれている王様は違うひとなのかもしれないしな……。
コートカードで他に面白いのは、
お前が「力」でいいのでは? というぐらい強そうなソードのネイブ。
何ならナイトより強そうな気もする。
キングっぽい風格のあるペンタクルのネイブ。
少なくとも嫌がる女を抱え込もうとしているキングのオッサンよりは、こちらの方が王者の風格がある。
綺麗なカードではあるのだが……
ご覧の通り、繊細な絵、華やかな色彩ととても美しいカード。
なので手にとって眺めているだけで楽しいデッキであはるんだけど、実はあまり使っていない。
シャッフルしにくいとかではなく、スプレットした時に凄くわかりにくいから。
上の画像を見ればなんとなく分かるかもしれませんが、綺麗な絵なんだけどどれも雰囲気が似ている。どれがどのカードが、パッとみただけだとわかりにくい。
アール・ヌーヴォー風に統一したせいか、人物の雰囲気も似ているカードが多い。そして女性の登場率が高いため、余計に見分けにくい。ペンタクル4のオッサンが美女二人に変化していることからも想像がつくかもしれないが、女性がとにかく多い。
それでも大アルカナまあわかるのだが、小アルカナは右下のシンボルと、カード上部の数字が頼り。3枚ぐらいのスプレットなら別に困らないかもしれないが、ケルト十字になるとパッと見ただけで判別するのはかなり難しい。
独自色の強い絵や構図を採用しているタロットを使う場合、その「ライダー版(或いはマルセイユ版)とは違う」部分を楽しみ、そのカードならではの雰囲気や構図、使われているモチーフなどを読み解く……というのが使い慣れている人の楽しみの一つなのだろうとは思うものの、金を独り占めしてニンマリしているオッサンと、美女二人が見つめ合っている絵では何もかも違いすぎる。
このデッキならではの意味を読み取るにしても、ペンタクルの4とワンドの4でどんな違いを見い出せというのか。
絵柄はもちろんアール・ヌーヴォー風に統一されているものの、構図やモチーフ、描かれている人物に「こういう世界観なんだな」というテーマがあるようでもなく、小アルカナにストーリー性が見いだせるわけでもなく、そうした点では少し残念にも感じる。
ただ絵はとても美しいし、背景に描かれている装飾も綺麗。
実際に使うには人を選ぶと感じますが、コレクションとしてはとても楽しめるタロットだと思います。
コメントを残す