いやもう、毎日毎日、殺意を感じるような暑さですがいかがお過ごしでしょうか。
この時期、仕事で趣味で買い物で外出中、暑さに耐えかね喫茶店などに駆け込み、ちょっと一服。
少し落ち着いて汗も引いたところで、手帳を取り出しメモでも取ろうとして……
ポタリ。
グラスやカップから水滴が!
インクの上に水滴が落ちて文字が滲んだ!
万年筆をお使いの方なら、こういう経験が一度や二度はあるのではないかと思われます。
まあ手紙や仕事で使う書類でもないかぎり多少は滲んでも構わないにせよ、文字が読めないほどになると困る。
というわけで、ノートや手帳の筆記によく使う青系インクの中で水滴ポタリに強いインクはどれなのか。
手持ちのインクを総動員して調べてみました。
まずはエントリー
今回、実験に使用したインクはこちら。
(クリックで拡大)
●パイロット
・ブルーブラック
・色彩雫 月夜
・色彩雫 深海
・色彩雫 天色
・色彩雫 松露
・色彩雫 孔雀
・色彩雫 竹墨
●セーラー
・ブルーブラック
・ナノインク 青墨
・四季織 時雨
・インク工房 224
●プラチナ
・ブルーブラック
●ラミー
・ブルーブラック?
●寺西化学工業
・ハイカラインキ スモーキーネイビー
●ダイアミン
・ブルーブラック
・スカル&ローズ
●文具館コバヤシ
・静岡インク 鉄仙
・静岡インク 石花海
松露や孔雀のような緑系、黒の竹炭も混ざっている上、スカル&ローズやインク工房224をブルーブラックとして使うヤツはいないだろう、という気はしますが、この際だからかき集めて試してみました。
この中で、セーラー、プラチナ、ラミーのブルーブラックはカートリッジ、他はすべてボトルです。
ラミーのカートリッジはサファリについてきたもので、おそらくはこれがブルーブラックだと思うのですが。
試してみようと思いたち準備を始めた段階で、プラチナとセーラーのブルーブラックが見つからず引き出しの大捜索開始。
プラチナの方はキュリダスに付属していたブルーブラックが見つかったものの、セーラーは諦めかけたところでようやく出てきました、コイツが。二個セットになっているところをみると、ふでdeまんねんについてきたヤツだコレ。
普段カートリッジを使わないので、今度はカートリッジを入れられるカラの万年筆を捜索。そうだよカートリッジ使うってことはガラスペンだと書けないではないか。
プラチナの方は予備のプレピーがすぐに見つかったものの、セーラーはそんな便利なものはなく。常用しているプロムナードを洗浄するしかないのか? と悩み始めたところで、コイツの存在を思い出す。
あって良かったハイエースネオ。
Xで「これバラせますぜ」という話をする時に洗浄しておいて良かった。
他は既に万年筆に入っているインクは万年筆で、そうでないものはガラスペンで書きました。
ガラスペンだとどうしてもインクが多めに紙に乗るので、正確にやるなら全て万年筆に入れてやるべきなんでしょうが、そこまでの気力はなかった。夏休みの自由研究なら先生に「どうせなら全てガラスペンか、すべて万年筆でやるべき」と指摘されるところです。
引き出しに突っ込まれていたスポイトも見つけたところで、いよいよ実験開始。
やり方としては、
1:ルーズリーフ(コクヨ)に字を書き、乾くまで待つ
2:スポイトで水滴を一滴垂らす
3:ティッシュペーパーで軽く押さえる
という方法を取りました。
グラスから水滴が垂れた後、慌ててティッシュで抑えた現場を再現する試みです。
ではいってみましょう!
パイロット系
まずは手持ち青系インクの種類が一番多いパイロット社のもの。
目を引くのは一番一般的なブルーブラック。書店や文房具屋でよく置いてあり、入手しやすいアレです。
「パイロットのブルーブラックは水に強い」という評判はよく聞きますが、それを証明した形。お前は本当に染料インクか?という滲みにくさでメーカーの顔としての威厳を示しております。
写真だとわりと滲んでいるなという感じですが、月夜や深海あたりも普段使っている感触だと、手が多少湿っている程度なら耐えてくれる印象。天色は水滴が落ちた場所より、その輪郭から滲んでいく様子が見えました。緑系ではありますが、松露も意外に頑張っている。
余談ですが、パイロットのブルーブラック、月夜、深海あたりは、コンバーターにインクをいれる段階で指先についてしまうと石鹸で洗ってもなかなか落ちませんので、注意してください。私はよくやります。
セーラー、プラチナ、ラミー
三社まとめていきます。
こちらの注目選手はセーラー社のナノインク「青墨」。流石の顔料インク、強い、水には滅法強い! 水滴ぐらいではビクともしない、「だから?」とでも言いたげな涼しい顔です。
メーカー説明によると顔料インクながら超微粒子で詰まりにくいというこのインク。実際、ラミーのサファリにけっこうな期間入れっぱなしにしておいたことがありますが、普通に洗浄してその後も普通に使えていたので、顔料インクだからと言って過度にビビる必要はなさそう。
このインクの難点は常用するにはお値段がちょっとお高いということぐらいでしょう。
一方、通常のブルーブラックははっきりと滲みを確認。とはいえ、許容範囲でしょうか。
時雨は耐水性では不安の残る滲み方、インク工房224は元の色が微妙な色の移ろいがあることもあってか、滲むというより水で消えるという風情でした。
プラチナのブルーブラックは水に強いと評判のパイロットにも引けを取らない強さ。国内メーカーの中では唯一、古典的な製法で作られているブルーブラックインクであるとメーカーが自信を持って伝えるだけのことはあり、かなりの耐水性を示しております。両者とも、完全に紙が乾いた後ではなお滲みがわかりにくくなっているのも特徴。過去の苦難などは「そんなこともあったな」と小さく笑って受け流す、懐の深さが感じ取れます。
ラミーのブルーブラックは水滴が落ちた瞬間にわかる惨状でした。かなり目立って滲んでいるのがわかります。とはいえ、いい色なので水を落とさないよう注意しながら使っていきたい。
他、三社詰め合わせ
残り三社、手持ちインクの中から「ブルーブラックと言えなくもないのでは?」という色味のものをかき集めてきました。
寺西化学工業ハイカラインキからのエントリー、スモーキーネイビーはザックリ滲んで乾いた後にも状況の回復ならず。しかしレトロな雰囲気のパッケージ、シンプルながら使いやすい形状のボトル、そしてネーミングにそった色合いと、心くすぐるインクであるには違いない。特にパッケージの可愛さとピンポイントに心を掴むネーミングのせいで、我が家のボトル棚には既にこのシリーズが5色揃っております。特にノスタルジックハニーは名前も色も最高だ。パンケーキのように美味しそうな色でついつい使ってしまう。
ダイアミンのブルーブラックはけっこう使用頻度が高いインクだったのですが、「こんなに滲んだっけ?」と意外な結果。どうやら今まで、このインクを使っている時にはあまり水滴事故は起こしていなかった模様。キリリとしたハンサムなブルーブラックで、気に入っております。
スカル&ローズは「そもそもこのインクをブルーブラックとしてノート取りに使うやつはおらんだろ」という気はしますが、ブルーブラックの横に合ったので引っ張り出してきました。レッドフラッシュがハッキリ出やすいインクとして知られていますが、そもそもの色が良い。私の撮影技術では全くわかりませんが、どことなくピンクのニュアンスを含んだ青はなんともいえない色味です。
ダイアミンのインクは店頭では見つけにくいものの、Amazonなどで通販可能。少量が手頃な値段で手に入るので、手を出しやすいインクです。そして色数が多いため、引き出しの中にどんどん増えていくインクでもあります。
文具館コバヤシの静岡インクシリーズからは、人気の鉄仙と個人的にお気に入りの石花海をチョイス。
青と紫の中間のような色味が魅力の鉄仙は、水にも強いことを証明。こちらはガラスペンではなく万年筆に入っていたため、インク量が適正だったという耐水実験に有利な条件もあったものの、水滴が落ちてもインクが広がりにくい強さを見せました。
一方、石花海はガラスペンでややインク量が多かった上、これを書いた時には「カートリッジ捜索→ハイエースネオ捜索→スポイト捜索→ボトルインクをかき集め→ひたすら上から書いていく」という作業の最後にきたことで字もよれているという、圧倒的不利な状況。そのわりには滲みが少なかったと考えるべきかもしれません。なお、この石花海もスカル&ローズに比べれば紙を選ぶ傾向はあるものの、レッドフラッシュが楽しめるインクです。
結果
以上、7社18種類による水滴実験でした。
顔料インクで水に強いのがわかっていた青墨は期待通りの結果。
プラチナのブルーブラックは水滴が落ちても滲みがわかりにくく、乾いた後にはほとんど気にならない程度までに回復していました。色味が好みに合えば、常用インクとしてかなりの有力候補と言えましょう。
パイロットのブルーブラックは上にも書いた通り「水に強い」と評判のインクですが、その評判を裏切らぬ結果。手に入りやすい、値段が手頃ということもあり、こちらも常用インクの王者の風格。私は色が好みということもあって、かなりお世話になっております。
他、耐水性という面では文具館コバヤシの鉄仙が目を引く。こちらは静岡インクシリーズの中でも人気の色ということで、実際、うっとりするような綺麗な色合いで私もお気に入りです。とはいえ、オリジナルインクで販売店舗が限られており、通販でも期間限定で出ているために入手がやや困難なのが難点か。
近年、オシャレな名前やボトルのインクが増え、文具店のオリジナルインクなども揃っていてインクを選ぶのも楽しく、逆に大手メーカーの「普通のブルーブラック」を手にする機会は減っている気もするのですが、やはりそこは各社の顔。パイロットやプラチナのブルーブラックの耐水性は、試行錯誤と企業努力の末に実用性を追求してきた、という強みがわかる結果かもしれません。
ノートにせよメモにせよ手帳に書くにせよ、耐水性が優先順位の上にくるということはあまりないとは思いますが、仕事で使うペンにいれるインクとしてはそのあたりも考えてみる価値はあるかと。
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